« 2017年のまとめ | トップページ

2018年1月11日 (木)

読書日誌:ミルクと日本人

読了日:2018/01/10
書名:ミルクと日本人
著者:武田尚子
出版年:2017年
出版社:中公新書
コメント
先日読んだ「人とミルクの1万年」にあった通り、人とミルクは実に長い付き合いだが、非乳文化圏に属する日本にあっては、一般人とミルクの付き合いはわずか150年ほど(明治以降)に過ぎない。
本書が描くのは、そうした日本におけるミルク受容の歴史にとどまらない。消費サイドのみならず、供給サイド(搾乳・加工・販売業者、出資者や牛乳配達人など労働者、行政など)を含めた様々な切り口からミルクと日本人の150年を描く。いわば、ミルクから見た日本近代史。
そもそも日本人にとって牛乳は当初、文明開化の象徴であった。牛乳生産が産業として立ち上がる過程では、アクターとして大久保利通や由利公正など維新期のビッグネームが幾人も登場する。
産業化初期、芥川龍之介の父は牧場経営者で牛乳販売業者。渋沢栄一はそのスポンサーであり、かつ顧客であった。一方、伊藤左千夫は、牛乳配達人から自営業主(搾乳業)に上昇したが、経営基盤は脆弱で、経営は楽ではなかった。
明治初期の牛乳配達の顧客は富裕層が主であったが、ミルクホールなど新たな営業形態が現れ、客層も変化してゆく。
ミルクの栄養的価値の高さは当初から注目され、やがて救貧策、社会政策のツールともなっていく。
関東大震災では緊急配布が行われた。日中戦争の勃発とともに、今度は将来の戦士たる「子供たちの体位向上」のため、ミルクが推奨された。
そして敗戦後の食糧難時代。ララ物資、ユニセフ援助で始まったミルク(脱脂粉乳など)、栄養食の福祉的配給は、やがて学校給食への導入による教育的供給へと展開していく。
かつての学校給食では、他のおかず等とのバランスなどおかないなしにいつもバットの隅には牛乳があった。あのスタイルは、それなりに歴史的経緯があってのことなのだ。

« 2017年のまとめ | トップページ

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/2032167/72669137

この記事へのトラックバック一覧です: 読書日誌:ミルクと日本人:

« 2017年のまとめ | トップページ